ルチル rutile TiO2 戻る

正方晶系 一軸性(+) ω=2.605〜2.613 ε=2.899〜2.901  ε-ω=0.286〜0.296

形態:粒状や紡錘形,角がとれたような4角柱状など。半自形〜自形のことが多い。C軸方向に伸びたものは伸長は正だが干渉色が非常に高いのでほとんどわからない。

色・多色性:濃淡の褐色・褐赤色・褐黄色,ほとんど黒色不透明。まれに無色。高温の変成岩中のものは濃褐色。多色性は弱い。
※ルチルや錫石は,還元環境下でできると原子配列の酸素のサイトが空孔になり,そこに電子が捕捉され,そこで光が吸収され暗色(濃色)になる。

消光角:伸びた形態のものは直消光。

へき開:認められない。

双晶:単晶のことが多いが,時に(1 0 1)の双晶をなし,自形のものは形態で,半自形〜他形のものは消光状態で認められる。その双晶ドメインは柱の伸び方向に関し120°あるいは60°の角度で接する。なお,反復双晶をなすこともある。

累帯構造:あまり認められない。

産状

変成岩では特に玄武岩やはんれい岩を起源とする苦鉄質の高圧型の結晶片岩(緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩・エクロジャイト)に副成分鉱物としてひんぱんに見られ,もともとTiに乏しい堆積岩起源の結晶片岩(黒色片岩・ケイ質片岩・紅れん石片岩など)には少ない。これらの広域変成岩中でルチルの多い部分には著量のF-Cl-リン灰石が伴われることがあり,それは変成流体中でTiがハロゲン化物(TiF4やTiCl4など)の状態で移動している可能性を示唆する。また,ひすい輝石岩中には暗褐色亜半透明〜黒色不透明粒状をなし,かなり還元的な生成環境を示す(結晶格子の酸素欠陥のサイトに電子が捕捉され,そこで光が吸収されている)。
片麻岩や火成岩にも含まれる場合があるが,他のチタン鉱物であるチタン鉄鉱,くさび石,チタン磁鉄鉱(ウルボスピネル)などに比べ少なく,産出する場合はそれらのTi鉱物の変質物として微粒集合体をなす場合が多い。

Ti鉱物はたいてい副成分鉱物であるが,その種類や産出状態は,以下のように岩石の生成条件を示唆するので重要である。
※酸化的な環境ではチタン鉄鉱の代わりに,ルチル−赤鉄鉱共生体が形成される。
※ルチルのようなTiO2鉱物はCa欠乏条件ででき,Caに富む結晶片岩・スカルン・アルカリ岩類ではTi鉱物としてはくさび石やペロブスカイトが普通である。
※ルチルの多形としてはアナターゼ(鋭錐石)・ブルッカイト(板チタン石)があるが,これらはルチルに比べやや低温生成であり,熱水変質岩や熱水〜気成脈に産する傾向があり,一般的な造岩鉱物ではない。



角閃石片岩中のルチル
Rt:ルチル,Czo:斜灰れん石〜緑れん石,Hb:普通角閃石
ルチルは特に苦鉄質岩から変成してできた緑色片岩・青色片岩・角閃石片岩に副成分鉱物としてよく見られ,このように紡錘形の半自形をなして散在することが多い。屈折率が著しく高く平行ニコルではやや黒ずんで見え,干渉色も著しく高くクロスニコルでは虹色〜くすんだ黄色に見える。なお,Caにやや富む結晶片岩にはルチルのかわりにくさび石が含まれる。





くさび石に交代されるルチル 
Rt:ルチル,Sh:くさび石,Jd:ひすい輝石,Prh:ぶどう石
ひすい輝石岩にはしばしば暗褐色〜黒色不透明のルチルが副成分鉱物として含まれ,ロジン岩化を受けたひすい輝石岩ではそのルチルの周囲はCa交代作用を受け,くさび石になっている(完全にくさび石に交代されていることも多い。このくさび石にはCaの代わりに著量のSrが含まれる場合がある)。同時にひすい輝石は部分的にぶどう石などのCa鉱物に交代されている。





チタン鉄鉱に交代されるルチル 

Rt:ルチル,Im:チタン鉄鉱,Alm:アルマンディン
ルチルのようなチタン鉱物には,周囲の変成流体と反応してできた交代組織が頻繁に見られる。これは還元的なFeの多い変成流体と反応し周囲から黒色不透明のチタン鉄鉱に交代されているルチル。エクロジャイト中のもの。